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「過払い金」最大手の旅行会社による詐欺

「過払い金」最大手の旅行会社による詐欺


主文

1一審被告の控訴に基づき,原判決主文第二項を取り消す。
2一審原告Aの請求を棄却する。
3 一審原告らの各控訴及び一審原告Aの当審で拡張した請求を
いずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審原告らの負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 一審被告の控訴の趣旨
(1)原判決主文第二項を取り消す。
(2)一審原告Aの請求を棄却する。
2一審原告A及び一審原告Bの各控訴の趣旨
(1) 原判決中一審原告A敗訴の部分及び一審原告Bに関する部分を取り消す。
(2) 一審被告は,一審原告Aに対し,7198万2500円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3) 一審被告は,一審原告Bに対し,1499万4000円及びこれに対する平成11年5月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 一審原告Cの控訴の趣旨
(1) 原判決中一審原告Cに関する部分を取り消す。
(2) 一審被告は,一審原告Cに対し,3000万円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4 一審原告らの本訴請求の趣旨
(1) 一審被告は,一審原告Aに対し,1億5000万円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え(なお,一審原告Aの上記請求のうち,5000万円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分は,当審において拡張された請求である。)。
(2) 一審被告は,一審原告Bに対し,1499万4000円及びこれに対する平成11年5月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え(なお,一審原告Bの請求は,当審において減縮された。)。
(3)一審被告は,一審原告Cに対し,3000万円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 本件事案の概要

1 原判決の記載の引用
本件事案の概要,前提となる事実及び判断すべき事項は,次項以下に一審被告,一審原告A及び一審原告Bの当審における主張を追加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「二事案の概要」の項の記載のとおりであるから,この記載を引用する。
すなわち,一審原告らは,一審被告の従業員であるDから,高額の手数料を支払うとして金員の交付を申し込まれ,それぞれDの指定する銀行口座に金員を振り込むなどした。
本訴請求は,一審原告らと一審被告との間で,預託金契約が締結され,これに基づき一審原告らが一審被告に対し上記各金員を交付したとし,仮に上記の預託金契約が締結されていなかったとしても,これはDが一審被告との間の預託金契約であるとの虚偽の事実を述べて金員を交付させた不法行為であり,Dの使用者である一審被告には使用者責任があるとし,さらに,一審原告A及び一審原告Bは,一審被告との間で旅行企画の委託又は旅行券の販売委託の契約が締結されたとして,上記契約の履行あるいは使用者責任を原因として,一審原告らが,一審被告に対し,上記各交付金に相当する金員の支払をそれぞれ求めている事件である。
これに対し,一審被告は,上記預託金契約などの契約の成立を否定し,また,一審原告らは,Dの不法行為について悪意であり,これを知らなかったとしても重過失があるなどとして,一審原告らの請求を争っている。
2一審被告の当審における追加主張
一審原告らが行っていたとする取引は,我が国最大手の旅行会社である一審被告が通常の商取引では考えられない暴利を約束して一審原告らから資金調達をするというものであって,それ自体極めて不自然なものであり,また,正規の契約書も作成されず,元本の返還時期も手数料の支払時期も約定されず,わざわざ一審被告の支店以外の場所で取引が行われ,極めて高額の手数料が一審原告Cを通して他の一審原告らに現金で交付され,その領収書の交付もされていないなど,その内容もおよそ正常な取引とは考えられないものであった。
また,上記取引では,一審被告との取引であるとしながら,その従業員にすぎないDが連帯保証をしたり,債権者であるはずの一審原告AがDに対し高額の約束手形を振り出したりしており,しかも,一審原告らは,このような不自然な点について,一審被告に何の問合せもしていないのである。
上記の事実関係からすれば,一審原告らが行っていた取引はD個人との間の取引であって一審被告の事業の執行についてされたものでない。
また,仮に一審被告の事業の執行につきされたものと解されるとしても,一審原告らは,Dには上記の行為をする職務権限がないことを知っており,仮に知らなかったとしてもそれについて重大な過失がある。
したがって,Dの不法行為につき,一審被告は,一審原告らに対し,使用者責任を負わない。
3一審原告A及び一審原告Bの当審における追加主張
(1) 一審被告の正規の銀行預金口座に,一審原告Aは2億5500万円を,一審原告Bは3000万円をそれぞれ振り込み,また,一審原告A及び一審原告Bは,一審被告の東京市ヶ谷支店の印が押印された預かり証,念書などの交付を受けていたのであるから,一審原告A及び一審原告Bと一審被告との間には,上記金員についての預託金契約が成立している。
また,一審原告Aの預託金及びその手数料の残額は2億1540万円であり,一審原告Bの預託金の残額は1499万4000円となっている。
(2)仮に上記の預託金契約が成立していないとしても,これはDが一審被告との間の預託金契約であるとの虚偽の事実を述べて金員を交付させた不法行為であり,一審被告はその使用者責任を負うが,一審原告Aの損害は上記預託額から手数料として受領した金額を差し引いた2億2040万円となり,一審原告Bの損害も同様に上記預託額から受領金額を差し引いた1499万4000円となる。
また,一審原告Aと一審原告Bには過失はなく,仮に過失が認められるとしても,その過失割合は3割以下である。
(3)したがって,預託金契約又は使用者責任に基づき,一審原告Aは,一審被告に対し,上記金員のうち1億5000万円及びこれに対する平成10年9月4日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合の遅延損害金の支払を,一審原告Bは,一審被告に対し,1499万4000円及びこれに対する平成11年5月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合の遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

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第3当裁判所の判断

1 一審原告らが一審被告あてに金員を送金した経緯などについて
前記引用に係る原判決の記載にある前提となる事実及び関係証拠(甲15,22ないし24,33,甲A1ないし4,乙1,2,3の1ないし7,乙4の1ないし6,乙5の1,2,乙6の1ないし17,乙7の1ないし13,乙8ないし10,証人D,同E,同F,一審原告C,一審原告A,一審原告B及び関係箇所に掲記の各証拠)によれば,一審原告らが一審被告あてに金員を送金した経緯などについて,次のとおりの事実が認められる。
(1)平成9年及び同10年ころ,一審原告Cは日本第三通信株式会社という会社の代表者,一審原告Aは三栄管理興業株式会社及び高松商事株式会社という会社の代表者,一審原告Bは夫が経営する石井基礎工事株式会社という会社の取締役であり,いずれもこれら中小の会社の経営に携わっていた。
一審被告は,旅行業,旅客鉄道会社及びその他の運輸機関の乗車船券類の発売などを業とする我が国最大手の著名な旅行会社である。
Dは,平成9年から同10年3月末までの間,一審被告の東京市ヶ谷支店(以下「本件支店」という。)の営業担当社員であった。
(2)Dは,平成9年初めころ,一審被告の内規に反する不正な取引を行ったことなどで多額の債務を負い,その支払に窮したため,一審被告の営業行為のように装って顧客から金員を騙取することを企てた。
Dは,平成9年2月ころ,営業活動などを通じて知り合った一審原告Cに対し,一審被告が航空券を大量に安く仕入れて販売しているので,この購入資金を預けてもらえれば,高額の手数料を支払うことができるとの架空の話をした上で,この預入金に対して1か月10%もの高額の手数料を支払うとして,資金の預入れを勧誘した。
これに対し,一審原告Cは,この裏付けとして,一審被告の振出手形あるいは一審被告作成の預り証及び印鑑登録証明書などの提供を求めたが,Dは,それはできないとしたが,本件支店の印を押印した預り証なら交付できるとの回答をした。
一審被告Cは,しばらくして,1か月20%の手数料を先払いするのであれば,資金を預け入れ,他の預入者をも紹介するとの提案をし,Dもこの提案を承諾した。
一審原告Cは,平成9年6月ころ,一審原告Aに対し,上記Dが話した内容を説明した上で,資金を預け入れれば多額の手数料が短期間に得られるとして,一審被告に資金を預け入れるよう勧誘し,その承諾を得た。
そこで,Dは,そのころ,一審原告Aと会ったが,手数料の額及びその支払時期,預け入れるべき金額及びその返還時期などの基本事項の確認をすることもなく,単に,挨拶をして本件取引について雑談しただけであった。
また,一審原告Cは,一審原告Bに対しても,そのころ,上記と同様の説明をして勧誘し,その承諾を得たので,Dが一審原告Bと会ったが,同じく手数料の額及びその支払時期,預け入れるべき金額及びその返還時期などの基本事項を確認することもなく,単に,挨拶をして上記取引について雑談しただけであった。
一審原告らは,上記の金員の預入れ取引(以下,この取引を「本件取引」という。)をすることを承諾したので,一審原告Cと一審原告Aに対しては,Dからそれぞれ覚書(甲20,21)と題する書面が交付された。
しかし,これは,一審被告の社名の入った便せんにワープロで文字が印字され,作成名義人である本件支店の名下に同支店の印が押印された簡易な書面でしかなく,一審被告が取引をするに当たって通常作成される正規の契約書とは全く異なるものであり,しかも,その内容は,預り金について預り証を発行すること,手数料は現金持参払いとすること,預り金は返済約束期日前にも払い戻すことができることなどが記載されているにすぎず,肝心の手数料の額及びその支払日,預け入れるべき金額及びその返還時期などについては何も記載されていないようなものであった。
また,一審原告Bに対しては,この覚書すら交付されなかった。
なお,上記覚書の本件支店名下の印影は,Dが同支店の印を盗捺したものであった。
したがって,本件取引については,手数料の額及びその支払日,預け入れるべき金額及びその返還時期などの主要な事項について合意が成立したことを示す書面は何ら作成されず,また,一審原告A及び一審原告Bについては,上記事項を口頭でDに確認することすらしていなかったのである。
ただし,Dと一審原告Cとの間では,上記のとおり,手数料額を1か月当たり預入金額の20%とするとの口頭の合意がされ,一審原告A及び一審原告Bも,少なくとも,2か月当たり預入金額の10%以上の金額の手数料が支払われるべきものと認識していた。
ところで,一審原告らは,極めて高額な手数料などのDの勧誘内容から,当初から,本件取引が正常な取引ではなく,税務申告をせずに済ませられるいわゆる裏の取引であると認識し,そのため,後記のように手数料を受領しても領収書を発行せず,また,本件取引の主要な事項を書面化しようとしなかったものとうかがわれる。
(3) 一審原告Aは平成9年7月1日から,一審原告Bは同月29日から,一審原告Cは平成10年1月19日から,それぞれDの指示する本件支店の正規の銀行口座である本件口座に金員を送金し(乙2),Dは,これに対し,本件支店の印を盗捺して作成した本件支店名義の預り証を交付した。
なお,Dが一審原告C及び一審原告Aに対し交付した預り証の中には,Dが預り金の返還を個人で連帯保証する旨を記載したものもあった(甲2,甲B12ないし15)。
一審原告Aの送金は,平成9年7月1日に2000万円(甲25),同月9日に3000万円(甲26),同年10月3日に2000万円(甲7),平成10年6月18日に5000万円(甲8),同月30日に2000万円(甲9),同年7月3日に1000万円(甲10),同月30日に2000万円(甲27),同日に8000万円(甲11),また,同月31日に500万円(甲12。
これは現金をDに交付した。)であった(年月日は入金日)。
一審原告Bの送金は,平成9年7月29日に1000万円,平成10年1月30日に2000万円(甲31)であった(年月日は入金日)。
一審原告Cの送金は,平成10年1月19日に500万円,同月21日に600万円(甲B5の2),同年2月17日に500万円,同日に500万円,同年3月5日に500万円,同年5月25日に500万円,同年6月3日に2200万円であった(年月日は入金日)。
(4)Dは,平成9年7月ころから平成10年10月ころまで,一審原告らに対し,1か月当たり預入金の20%の割合の金額の手数料をほぼ毎月支払い,その支払総額は2億円近くにまでなった。
この手数料は,Dが,毎月,その月の一審原告らの手数料の合計額を,一審原告Cに対し直接現金で交付し(数回は一審原告Cの口座に振り込んだ。),一審原告Cが,これから一審原告A及び一審原告Bに対し,各手数料を現金などで支払った。
ただし,一審原告Cは,Dが一審原告A及び一審原告Bの手数料として交付した金員の一部を差し引いて自ら取得し,残金のみを一審原告A及び一審原告Bに支払っていたことがうかがわれるが,その差し引かれた額は明らかではない。
なお,一審原告らは,この手数料の授受について,領収書を一切発行しないなど,手数料の支払状況が明らかにされないよう工夫し,また,預り証,預託金及び手数料の授受などの本件取引に関する行為は,すべて本件支店以外の一審被告と無関係の場所で行った。
(5)Dは,一審原告らが送金した金員で一審被告が発行するナイストリップという名称の旅行券を購入し,これを金券業者に売却して現金化していた。
すなわち,Dは,本件支店に対しては,一審原告らが本件口座に入金する金員は金券業者がナイストリップを購入する代金であるとの虚偽の申告をし,さらに,大阪の金券業者などにナイストリップを廉価で販売するとしてその購入の注文を受け,同支店をして,本件口座に入金された金額に相当するナイストリップを上記業者あてに発行送付させ,その金券業者からこの代金をDの個人口座に送金してもらっていた。
また,場合によっては,Dが直接金券業者に送付するとして,これを預かって金券業者に持ち込んでこれを換金していた。
ところで,換金によって得られた金員は,Dの債務の支払に充てられたり,さらに本件の手数料の支払に充てられたため,この預入金を返済できる見込みは当初から存在せず,この利息の支払のために新たに預入金の提供を求めるような状況に陥っていた。
なお,一審原告らによって本件口座に送金された金員の合計3億3300万円のうち,一審原告Aから入金のあった平成10年7月30日の2口合計1億円については,Dから,送金ミスとの連絡がされて,その扱いがされ,また,一審原告Cから入金のあった同年5月25日の500万円のうちの483万円が別の口座に入金されたほかは,残額2億2817万円についてナイストリップが現実に発行され(乙2),Dにおいて換金されていた。
(6)Dは,平成10年秋ころ,一審原告C及び一審原告Aに対し,一審被告の経理担当者から不審に思われているので,一審被告に信用してもらうため見せるだけで決済はしないなどと述べて,約束手形の振出しを依頼した。
一審原告Aは,これに応じ,一審原告Aが経営する会社振出名義の同年10月6日付けの額面7億9000万円の約束手形を振り出し,さらに,この額面7億9000万円の約束手形の書換えのため,一審原告Aが経営する高松商事株式会社振出名義の同年10月16日付けの額面合計9億9000万円の約束手形3通を振り出し(甲17),これらをDに交付した。
Dは,これらの手形をDの債権者(金券業者)に交付したが,そのうち,平成10年10月16日付けの2億円の約束手形が不渡りとなった結果(甲19の1,2),本件取引は破綻し,Dが行っていた本件の不正行為が一審被告に発覚するに至った。
なお,一審原告らは,いずれも,本件取引が破綻するまで,一審被告に対し,本件取引の不審な点について問い合わせをしたことがなく,また,一審被告は,Dの本件の不正取引を全く認識していなかった。
(7) 一審原告Cは,Dの本件の不正行為が一審被告に発覚すると,一審被告から和解により金員を回収しようと考え,Dに対し,Dが上記の預入金及び支払手数料の明細を記載していたノートを破棄させ,さらに,あらかじめ本件支店の印を盗捺してあった白紙の一審被告の便せんを利用して,一審原告Aと共同して,自己の都合に合わせた内容の預り証(甲2,14)や念書(甲3,13,20)を何通か偽造させた。
その上で,一審原告らは,手数料として受領した金額が実際に受領した金額より少ない額であるとの虚偽の主張をして,本訴を提起し,一審被告との和解を求めた。
なお,一審原告A及び一審原告Bは,本訴の提起後,上記の金額の主張が虚偽であったことを認め,その主張を訂正している。
なお,一審原告C及び一審原告Aは,いずれも,本件取引をするに当たって,本件支店の支店長に電話をし,本件取引が間違いのないものであることを確認したとの供述及び陳述(甲22)をするが,上記の事実関係に照らして,この供述及び陳述は信用できない。
2 一審被告の一審原告らに対する責任について
上記の事実関係に基づいて,一審被告に一審原告が主張する責任があるか否かを検討する。
(1) 一審被告の契約責任について
一審原告らは,一審原告らと一審被告との間に預託金契約が締結されたとの主張をし,一審原告A及び一審原告Bは,これに加えて,一審原告A及び一審原告Bと一審被告との間に旅行企画の委託又は旅行券の販売委託契約が締結されたとの主張をする。
しかし,上記1の事実関係によれば,一審原告らに交付された預り証などはDが偽造したものであり,Dは,この偽造した預り証などを使用して,一審原告らに対し,一審被告に金員の預入れをするなどの虚偽の事実を申し向け,これを信じた一審原告らに金員を送金させたことが認められるのであって,一審被告が一審原告ら主張の契約関係の事実を認識したり,その契約を締結したりしたことを認めるに足りる証拠は存在しない。
したがって,一審原告らの上記契約責任の主張には,いずれも理由がない。
(2)一審被告の使用者責任について
ア 一審原告らは,本件は,Dが一審被告との間の預託金契約であるとの虚偽の事実を述べて一審原告らに金員を送金させた不法行為であり,これは一審被告の事業の執行につきされたのであるから,Dの使用者である一審被告には使用者責任があるとの主張をする。
そこで検討するに,上記1の事実関係からすれば,Dは,一審被告の航空券の仕入れ及び販売の業務に関連して,営業担当のDの業務のように装った上で,一審原告らに対し,本件支店の印が押印された預り証を示すなどして,一審被告が航空券を購入するための資金の提供を受けてその手数料を支払うとの虚偽の事実を申し向け,一審被告にこの資金を預け入れるよう勧誘し,これを信じた一審原告らに,本件支店の正規の取引口座である本件口座に金員を送金させたのであるから,Dの上記行為は,詐欺による不法行為に当たるものということができる。
また,Dの上記行為は,外形的にみれば,航空券の仕入れ及び販売などの業務を営む一審被告の事業活動に属し,また,本件支店の営業担当従業員であったDの職務の範囲内の行為に属するものと認められるので,一審被告の事業の執行につきされたものと認められる。
イ一審被告は,外形からみてDの行為が一審被告の事業の範囲内に属するものであったとしても,Dが権限なくこれを行ったことについて,一審原告らはそのことを知っており,また,これを知らなかったとしても,そのことについて重大な過失があるとして,一審被告は使用者責任を負うものではないとの主張をする。
そこで検討することとする。
上記1の事実関係からすると,Dが一審原告らに持ちかけた本件取引とは,我が国最大手の著名な旅行会社である一審被告が,1か月当たり預入金の20%ないし2か月当たり預入金の10%という通常の商取引では考えられない高利の手数料の支払を約束して,中小企業の経営者にすぎない一審原告らから資金の提供を得ようとするものであって,しかも,航空券を大量に安く仕入れて販売するという旅行会社の通常の業務の中からこの高利の手数料を支払うというのであるから,一般通常人の知識経験から判断しても,このような高利の支払をしてまで資金の提供を求める利益が一審被告にあったとは到底うかがわれず,また,それが可能とも考え難いのであって,それ自体極めて不自然かつ疑わしい話であったということができる。
また,本件取引については,手数料の額及びその支払日,預け入れるべき金額及びその返還時期などの主要な事項について,合意が成立したことを示す書面が何も作成されておらず,Dと一審原告A及び一審原告Bとの間においては,上記事項についての明確な合意がされたことすらもうかがわれず,この本件取引に関する行為のすべてが一審被告とは無関係の場所で行われたばかりか,一審原告らは手数料を受領しても領収書すらも発行しなかったのである。
したがって,このような本件取引が正常な取引といえないことは明らかであるが,一審原告ら自身も,当初から,これが正常な取引ではなく,税務申告をせずに済ませられるいわゆる裏の取引であると認識していたことがうかがわれるのである。
さらに,本件取引では,一審被告の従業員にすぎないDが一審原告C及び一審原告Aに対して連帯保証をしたり,債権者であるはずの一審原告Aが本件取引の維持のためDの要求に応じて高額の約束手形を振り出すなど,正常な取引では到底考えられない行為がされていたのである。
ところが,一審原告らは,本件取引が上記のような極めて不自然あるいは疑わしいものであることを認識しながら,あえて,この不審な点につき,一審被告に対し何の問合せもしなかったのである。
加えて,Dの不正行為が一審被告に発覚した後の一審原告らの対応をみても,一審原告Cは,預入金及び支払手数料の明細が記載されていたDのノートを破棄させるとともに,あらかじめ本件支店の印が盗捺してあった一審被告の白紙の便せんを利用し,一審原告Aと共同して,自己の都合に合わせた内容の預り証や念書を何通か偽造させ,その上で,一審原告らは,手数料として受領した金額が実際に受領した金額より少ない額であるとの虚偽の主張をして,本訴を提起し,一審被告との和解を求めたのである。
そうすると,一審原告A及び一審原告Bについては,上記の事実関係からしても,Dが権限なく本件取引を行ったことの認識があったとまで推認するには足りないが,本件取引が極めて不自然あるいは疑わしいものであることを認識しながら,あえて,この不審な点につき,一審被告に対し何の問合せもせず,また,Dの不正行為が一審被告に発覚した後,関係文書の偽造あるいは虚偽の主張をして一審被告との和解を求めた経緯からして,そう認識したことについて,故意に匹敵するような重大な過失があったものということができる。
また,一審原告Cについては,上記の事実関係のほか,1か月当たり20%もの極めて高額の手数料の支払をDに求めたばかりか,一審原告A及び一審原告Bを勧誘した上で,一審原告A及び一審原告Bへの手数料の一部を自ら取得して,Dの不正行為を利用して自己の利得をも図っていたことがうかがわれ,Dの不正行為が一審被告に発覚した後も,一審被告との和解交渉を有利に展開させる目的で,Dに関係書類の隠滅や偽造をさせ,また,虚偽の主張をして訴訟を提起することなどを積極的に行っていたことからして,一審原告Cには,Dが権限なく本件取引を行ったことの認識があったものと推認される。
仮に一審原告CがDの無権限を認識していなかったとしても,そう認識したことについて,故意に匹敵するような重大な過失があったことも明らかである。
したがって,一審被告は,Dの不法行為について,一審原告らに対し,使用者責任を負うものではない。
(3)まとめ
以上によれば,一審原告らの本訴請求はいずれも理由がないこととなる。

第4結論

よって,一審原告Aの請求を一部認容した原判決主文第二項は失当であるから,一審被告の控訴に基づいて原判決主文第二項を取り消して,これを棄却し,また,一審原告らの各控訴及び一審原告Aの当審で拡張した請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。

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同時廃止とは

個人の自己破産の場合、大抵が同時廃止です。
では、同時廃止とは何か、その反対の管財事件とは何か?
その法的な答えはこちら


以下
当該
取消し